『長谷川弘詩集』
編者: 池谷竜
装画: 長谷川弘

発売日:2022年6月21日
定価:1,300円 (税別)
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 本詩集は大正10年1月19日に籾山書店より刊行された長谷川弘詩集『奧ゆかしき玫瑰花』、及び詩集制作にまつわる書簡をまとめたものである。

 長谷川弘は大正6、7年頃より詩作を始めるも同人詩誌や商業文芸誌等への寄稿や投稿、いわゆる詩人としての表立った活動はないが、木版画家として大正9年4月開催の日本創作版畫協會第2回展に入選している。同年9月に喘息療養の為、相州鵠沼(現神奈川県藤沢市南部)で養生していた長谷川は医者から外出禁止を勧告され、11月に病態悪化、東京帝國大學傳染病研究所(現東京大学医科学研究所)附屬病院へと入院するも甲斐なく大正9年12月1日、長谷川弘は病没。享年23歳であった。

 忌日より49日後、大正10年1月19日に長谷川弘詩集『奧ゆかしき玫瑰花』が籾山書店より110部上梓。但し、これは遺稿詩集とも言いがたい。大正9年9月二25日、我が畢命を受け入れるべく長谷川弘は親交のあった詩人の日夏耿之介に50篇程の詩原稿1冊を送り、日夏の慧眼により精選された詩18篇にて詩集は構成、日夏による序も長谷川の生前に識す。既に原稿校正も経て長谷川は紙装にするか革装にするかを決め倦ねる手翰が同年11月19日。ここまでは本書収録《日夏耿之介宛書簡》から窺い知れる。長谷川弘没後、詩集出版を引継ぐのは義兄の伊藤仙三郞(次姉幸の夫)である。最終的に革装と断ずるのが長谷川だったのか義兄か籾山書店なのかは判らぬが、表裏装画及び扉絵の木版画、装幀までを長谷川本人が手掛けている。後年、日夏は述懐する「紫色の剝ぎ革の柔かい表紙にROSA. H. HASEGAWAとローマ字で圍んだ金色の薔薇の花の金版を捺した。四六版を方形に切つた瀟洒な薄い冊子で十八篇の詩が收つてゐる。澁い色のもろい包紙の色と感觸とがひどく佳かつた」と。
 

以上、『長谷川弘詩集』の「編者解題」より抜粋
 

2022.6.13 Ryo Iketani