『大手拓次詩集 下巻』
編者: 池谷竜
装画及挿画: 多賀新

発売日:2023年10月19日
定価:各2,600円 (税別)
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 本詩集は明治後期から昭和初期にかけて活動していた詩人、大手拓次の詩をまとめたものである。上巻に詩集『藍色の蟇』の拓次による自選版を収め、下巻には『藍色の蟇』未収録のものから撰定す。

 本詩集下巻の概括を記す。下巻は詩作年月日順に配し、「明治期」「大正前期」「大正後期」「昭和期」の4つに区分。際目の時期については原子朗編集による岩波文庫版『大手拓次詩集』(平成3年刊)にならった。ただし下巻は上巻『藍色の蟇』と対を成すべく編纂したゆえ、散文詩及び文語詩、訳詩を割愛。下巻内訳は明治期(40年から45年)11篇、大正前期(元年から6年)54篇、大正後期(7年から15年)74篇、昭和期(元年から8年)43篇、計182篇を収録。上巻は164篇収録。
 岩波文庫版での原子朗による詩の選択は「作品の出来ばえ」を中心としつつも「作風の統一、あるいは変化が読者にも読みとれるようにと、構成的な配慮がはたらいて」おり、出色の精選といえよう。佳品揃いの岩波文庫版とは趣を異にし、下巻では詩の出来栄えや構成等を考慮せず、短詩であれ小品であれ委細かまわず簡抜。その撰定基準も至って平明、既存の拓次像を損ねぬよう配慮しつつ、ひとえにグロテスク及び猥褻性が際立つ詩や一過性の実験的な詩、物語性重視の行分散文風な詩、無題の詩や敬体の詩を省いたのち、編者の嗜好に徹す。さりとて不本意ながら除外したものも少なくない。尚、下巻では原子朗編集の岩波文庫版『大手拓次詩集』は勿論、逸見享編集によるアルス版『藍色の蟇』とも重複なきよう選りすぐったので、併読いただければ幸いである。
 

以上、『大手拓次詩集 下巻』の「編者解題」より抜粋
 

2024.4.30 Ryo Iketani