『井口蕉花全集』
編者: 池谷竜
装画: 多賀新

発売日:2021年11月17日
定価:1,600円 (税別)
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 本全集は大正後期に名古屋で活動していた詩人の井口蕉花の詩及び訳詩、短歌や批評、随筆等をまとめたものである。
 井口蕉花は大正9年から13年にかけて名古屋の同人詩誌『赤い花』や『靑騎士』等へ参画、その主な詩作活動はわずか5年程で現在は勿論、当時でさえ彼の名を知るものは少なく、生前に著書が出版されることもなかった。本全集には彼の未刊詩集『墜ちたる天人』を収録、これは大正12年1月発行の同人詩誌『靑騎士』第4号最終頁に近刊書として井口蕉花詩集『墜ちたる天人』が広告されており、蕉花の構想に基づき此度編集した。その広告頁には発行部数や時期、申込金額や締切日に到るまで詳細に告知がなされ、翌号や翌々号でも再三予告するも延期。同年6月発行の同誌第2巻第3号(通巻第9号、以下通巻表記)掲載「墜ちたる天人に就いて」で遅延事由や詩集構成等を蕉花自ら告白しているので本全集冒頭に収録。以降も度々近刊予告されるも第14号発行から8日後の大正13年4月18日、井口蕉花は病歿。第15号《井口蕉花追悼號》を以って詩誌『靑騎士』廃刊、詩集『墜ちたる天人』も未刊に終わる。

 蕉花逝去から5年後の昭和4年6月、遺稿詩集として『井口蕉花詩集』が100部上梓。本全集はその遺稿詩集に収録された詩30篇に加え、詩八篇と訳詩2篇、短歌12首、批評1篇と随筆3篇を収録した。ここで特筆すべきは短歌であろう。彼が短歌を詠んでいたことは春山行夫や宮島與志雄による証言、遺稿詩集の略歴にも記されているものの残存不明とされてきたが、今回の全集編集にあたり大正9年12月発行の同人歌誌『ひとみ』第8編に短歌12首を確認出来たので収録。又、彼の最も早い時期の投稿と思しき大正8年7月25日付『名古屋新聞』掲載の井口蕉下客名義による詩「夜の丘」、翌年6月発行の文藝誌『文章世界』第15巻第6号掲載の福太郎名義による詩「病める侏儒」を収録し得たのも望外の悦びである。
 

以上、『井口蕉花全集』の「編者解題」より抜粋
 

2021.11.1 Ryo Iketani