無限の弓

詩:山田 一彦
 

 火の如き蜘蛛の絲絲への演繹され得る慾望への指環 その肉感を露出せるひとつの蓮を拒否するための龍宮の旗旗への肖像の搖れる 斷然たる夢 それらの花の如き生殖器は空への否定のための傳統を切斷せし犠牲である 永遠の自殺を可能ならしむる腦膸を南に向けし龍の生へる菩提樹あるひは蓮の萼に座わることの可能である孔雀の臍 隨圓空間の膝に垂直なる大藏鄕に於ける地獄の頸と稚兒それらに羽衣であるひとつの菊をかけることは傲慢の不能を許す宮庭の煌煌しき光には等しく無い 永遠の龍へ向けられた王樣の無限なるひとつの夢に依つて神神は無限の階調の蠟燭を碾き簾の有る童女のために宮殿のあまりにも麗しい龍たちを殺害する阡の艶麗なる巴であるその微塵ある舞踊を持つ匣 ひとつの神のための山山はアレキサンドリアの寶石を捲く約束に過ぎない それは氷河に煌く森林が接待の鵞ペンをしか漉し得なかつた時間である それらを私の願望への花を以つて切る 私の思想の如き空の多數の約束たちは蛇の毛に對してのみ可能で有り得る裳裾である 私の生存への思索は灰の角を拭ふ夢で無ければなら無い けれども接觸へのみしか轉ぱない波紋は貪慾なる謎たちの結晶ではある 不毛の花の尾に對立した夢たちは墮落をはかる考察を濾過することの無い空間を持つ魚魚へのみ許される鳥鳥への拒絶を住む氷河の森林である 孤獨のためにのみ開らかれる窓窓から未知であるひとつの魚を眺めることの許され無い魯鈍あるひは神神へ獻ぜられる最後の花環は貪慾の氷山をそれらの腕環へ與へることを許し 地獄の鬼鬼の柱はひとつの惡魔のために魚の絨氈を破ることの可能を承認した
 
 

以上、『山田一彦全集』より
 
 

2021.8.16 Ryo Iketani






カテゴリー: 山田一彦