14年前の2006年1月6日朝、山田仁(享年32歳)は他界した。前年12月、石油ストーブの不完全燃焼による一酸化炭素中毒で自室にて意識不明となり、数日間入院の末に永眠した。

 山田仁氏は京都を拠点に音楽活動をしていたフォークシンガーである。氏とは京都三条のライブハウス『VOXホール』が初見で、当時私は未だ十代であった。氏とは一緒にライブを行う約束を幾度か交わしたが、叶うことはなかった。
 

 昨年リリースした第一曲集『胸に花影』は氏へのオマージュとして、果たせぬ氏との約束の代わりとして、歌詞ブックレット(CD版)にこう記している。

これらの曲を花の一種として
山田仁の墓前に捧げる

『胸に花影』献辞より
 

 

 氏が生前にリリースしたCD Album『あれから二十六年 黄色い瞳で明日を見ている』の収録曲から「心」の音源並びに歌詞を以下に紹介する。
 

 

『 心 』

作詞作曲:山田仁

 
どうしてこんなに空が醜くくみえるのかな
それは僕の心が貧しいから
それとも僕が誰も信じないから
あぁ 雨が降りそうだ
僕はただ夕焼けが見たかった
僕は今新幹線の中

缶ビィルだけが冷たかった
 
どうしてそんなにあなたが輝いてみえるのかな
それは笑顔で居てくれるから
それとも僕が眠っていたから
あぁ 夢のままで居て
僕はほんの少し淋しくなった
僕は今新幹線の中

あなたの名前を呼んでみた
 
どうしてここまで誰も 愛せなくなったのかな
それはもう強く生きられないから
それとも僕が臆病だから
あぁ 今僕の前に夜が降る
とてもきれいな夜が降る
僕は今新幹線の中
今夜も独りで眠る
 
あぁ 花ビラが落ちてゆく
僕を誘惑しながらおちてゆく
僕は両手で花ビラを掬い上げ
写真の中の君に投げつけてやった
 
とてもとても哀しかった 僕には心があるから
僕はあなたのその心がただ欲しいだけ

 
どうして何度もウソを並べてしまうのかな
それは僕の心が卑しいから
それとも無邪気を忘れたから
あぁ ブランコがゆれている
振りかえるともう僕は居なかった
僕は今新幹線の中

僕は実に嫌な男になった
 
どうしてこんなに哀しくて

涙が出そうになるのかな
それは太陽が裏切ったから
それとも歯を食いしばったから
あぁ くやしくてたまらない
何故あなたが見えないのかと
僕は今新幹線の中

やっとやっと涙が流れた
 
あぁ もう涙が止まらない
哀しくてくやしくてたまらない
僕は両手で涙を掬い上げ

流れる涙の純粋さを知った
 
とてもとても嬉しかった 僕には心があるから
僕はあなたのその心がただ欲しいだけ
とてもとても嬉しかった 僕には心があるから
死ぬのがただ怖いだけ
それは僕が生きているから
 
 

  

 最後に氏の同アルバム収録曲『希望』の歌詞一節を引用し、弔意を表す。
 

あなたにも美しい心がある

Jin Yamada
 

  

2020.1.26 Ryo Iketani

 
 
 
 
 
 

カテゴリー: 随筆音楽論